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谷本誠一・保護者へのアドバイス 10

将棋が強くなるための勉強方法

平成20年9月30日

 低年齢ほど、右脳の働きが活発化しており、つまりイメージ力を重視しするために、実戦主体の勉強方法がよいと思います。理屈で考える左脳を活かした勉強方法、即ち定跡を覚える方法では、伸びに限界が来ます。これは私自身が苦い体験を持っています。
 私は中学1年生から本で将棋を勉強しました。誰も教えてくれる人がいなかったため、小学館の百科事典で将棋のルールを覚えたのです。以来中学生から高校生まで300冊くらいの本を読破し、定跡を会得しようとしましたが、これが奨励会で伸びなかった要因ですね。加えて将棋を覚えるのが遅すぎたということ。これは取り返しがつきませんでした。
 奨励会入会も高校卒後ですから、大変な遅れをとりましたね。後輩の奨励会員に南現九段や神崎現7段、浦野現7段等がおられまして、最初は私がカモにしていたんですよ。定跡と言えば私の方が遙かによく知っている。ところが、年齢の若い彼らが徐々に追い越して行ったんです。イメージ力というか、インスピレーションが違うなという感じでした。私より定跡を知らないにも関わらず、指し手の伸びが違うんですよ。彼らの方が自由奔放に指しているって感じでした。それに比べ私は、定跡という小さい枠の中にとらわれた井の中の蛙だったのではないでしょうか?
 特に将棋の定跡は、皆さんご指摘されておられるように、日進月歩なんです。コンピューターソフトに最新定跡を教えても、1週間後にはそれを凌駕する新手が発見されています。それがよい手か否か、プロ棋戦でたちどころに試行錯誤され、よい手であれば新定跡として進化します。ところがそれに対する対抗手段がすぐ考察され、新手として出現するのです。これらが巡り巡って、昔の定跡に戻ってしまうことがあるんですよ。表面上は同じ指し手であっても、内容が全く異なり、同じ局面から、全く新しい展開が開拓されるんです。このようなレベルは、棋力がかなり向上してからで、十分ついていけるようになりますから、心配はいりません。結論として、定跡を鵜呑みにしてしまうことは、非常に危険なのですよ。
 つまり左脳を駆使すればするほど、右脳のイメージ力や想像力が抑圧されるため自由奔放な個性溢れる指し口が開発されず、定跡、つまりここはこう指すべきだ」という呪縛から逃れることができなくなり、結果指し手が萎縮してしまい、やがては伸びが鈍化します。
 よく「定跡を覚えて将棋が弱くなった」との嘆きを聞きますが、これはあながち本当です。人間はまず右脳で教育され、成長に従って自然に左脳が作用するのです。つまり定跡は自然に後から身につくものなんですよ。ですから実戦主体の勉強が一番です。その際道場で自分より強い相手と指すことを嫌がってはダメですね。駒落ちでどんどんチャレンジされたら宜しいかと思います。将棋は、やはり自分より強い人と指す方が、上達しますよ。相手の考えやよい部分、エキスを知らない内に直接肌で吸収できるからです。
 それと詰将棋が基本でしょう。これは右脳を啓発するのに最適です。詰将棋というのは、詰む最終の形をイメージできないと、なかなか解けないものです。3手詰からどんどん詰まして、徐々に手数を伸ばして行けばよいでしょう。
 詰将棋は、スポーツに例えると、基礎体力づくり、筋肉トレーニングのようなものです。例えば兎跳びとか、ランニングとかして身体を作っていきますよね。そして練習試合で実戦感覚を養います。これが他チームとの練習試合であり、将棋で言えば道場で実戦対局を多く積むことです。そして公式試合、これは各地で開催されている将棋大会のことです。この体験も重要ですね。