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【序文】詰将棋創作とパソコン

平成16年9月18日

谷本誠一


 私が詰将棋を初めて創作したのは、中学2年の時です。当時は非常に難しいものと痛感し、長続きはしませんでした。また奨励会時代は、専ら指将棋としての定跡研究と実戦の繰り返しで、詰将棋解図は不得手な分野でした。江戸時代のバイブルとの誉れ高い伊藤宗看、伊藤看寿の著した「将棋無双」と「将棋図巧」にも取り組みはしましたが、敢えなく挫折。またちょっとした問題で、仲間と解図にかかる時間で競争しても、大抵かないませんでした。当時どちらかと言えば、直感で手が浮かんで来るといったタイプではなく、「鈍亀流」と言われる様に感性に乏しく、従って詰将棋は苦手だったことは間違いありません。
 それが、日本将棋連盟の地元支部を起ち上げ将棋の世話役に回るようになってから、大会参加賞用の詰将棋集を編集したのがきっかけで、俄然詰将棋創作に興味を持つようになったのです。平成7年秋のことでした。以来今日まで200番余りを創作致しました。作風としては、上級向きの中編作で、変化が多岐にわたる含みの多い難解作が得意です。
 平成15年に入って、私の呉三津田高校将棋クラブ時代の後輩で、現在詰将棋作家でもある八王子市在住の宮浦忍君が、詰将棋解図用パソコンソフトを購入されました。それまで余詰検索を彼にお願いしておりましたが、それ以降最終的には全てパソコンの助けを借りて完成作品のチェックをするようになったのです。そうすると、既存作品にもかなり余詰が発見され、パソコンに潰されてしまいました。私の作品は変化多岐にわたる中編作が多かったので、不完全率もかなり高かったのです。もちろん宮浦君自身の作品もかなり潰されたようです。さしづめ「パソコンショック」とでも言いましょうか、我々の消沈はかなりなもので、しばらくは立ち上がれないと言っても過言ではありませんでした。
 その年の前年は呉市制100周年。それを記念して呉市と日本将棋連盟が共催で「将棋の日イベント」を挙行致しました。そのパーティ前座の内々の席で、羽生善治竜王、谷川浩司王位、二上達也日本将棋連盟会長らとご一緒する機会を得る栄誉に預かりました。その折にも、「自作の詰将棋をパソコンにかけてしまいたくない。自慢の作品ががらがら音を立てて崩れるのを見るのが忍びないから・・・・」と冗談げに話していました。それが半年も経つか経たない内に、現実のものとなってしまったのは皮肉なことです。
 ところで私は、これまで将棋世界と近代将棋各誌に作品を2~3回投稿したことがありましたが、選考から漏れ、以来投稿は一切しておりません。あくまでローカルの将棋大会での参加賞用詰将棋作品集にて、作品発表を行って来たに過ぎません。そういう意味から、作品を真に世に問うのは、今回が初めてとなります。大げさですが、歴史に少しでも足跡を残すために、既存作品を改めて宮浦君を通じてパソコンの関所で検問して頂きました。そしてかなりの部分で修正と改良を加え、パソコンのお墨付きを頂いた上で、この度先ず第一段として、50番を選題させて頂いた次第です。内訳は初級10番、中級23番、上級17番です。読者の皆様が解図し易いように、段級位のバロメーターとヒントを掲げ、手数に関係なく難易度の低い作品の順に並べました。皆様の解図または鑑賞を心よりお待ち申し上げます。尚、今後新作も付け加えて参る予定です。
 最後になりましたが、作品の監査と修正にあたり、適切なアドバイスを賜った宮浦忍君に、この場をお借り致しまして、厚く御礼申し上げます。